サ高住の経費や利益率とは?補助金・優遇措置や経費削減のポイントを解説
バリアフリーに対応したサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)は介護度が低い高齢者を対象としており、介護業界の中でも参入しやすい事業といわれています。サ高住を運営するためには利益率をはじめ、設立費用や経費、収入源などのお金の流れをつかみ、経営戦略を立てることが重要です。
本記事では、サ高住の運営にかかる費用の目安や、設立・運営のメリット・デメリット、経費削減のポイントを解説します。サ高住の一般的な収益や経費を把握でき、運営に役立てられるため、ぜひ参考にしてみてください。
サ高住の利益率とは?設立費用・経費・収益源を解説
まずは、サ高住の利益率と設立費用、経費の目安や収益が生まれる仕組みを解説します。利益率・経費・収入源は厚生労働省が2016年に発表した「高齢者向け住まいにおける経営実態の把握のあり方に関する調査研究事業」のデータを基に紹介します。
出典:厚生労働省「高齢者向け住まいにおける経営実態の把握のあり方に関する調査研究事業」
サ高住の利益率
厚生労働省が発表した同調査によると、特定施設入居者生活介護施設に該当しないサ高住の平均利益率は約-15.5%となっています。平均利益率が赤字であることから、思うように利益を出せずにいる施設が多いことが考えられます。
赤字経営の施設が多い理由は、サ高住の運営の難易度が高いためです。サ高住の経営改善を図り利益率を高めるには、効果的な経費削減を行い、運営にかかる経費を減らすことが重要なポイントとなります。
サ高住の設立費用
サ高住を設立するために必要な費用の内訳と目安を紹介します。例えば、定員が20名以下で、土地面積200坪、延床面積300坪のサ高住を設立する場合の主な費用の目安は以下のとおりです。
- 土地購入費用:2億円前後(1坪あたり100万円前後)
- 建築費用:4億5,000万円~(1坪あたり150万~)
- 備品・設備購入費:約1,500万円~2,000万円
- 販促費用:約200万円~300万円
- 求人費用:約200万円~300万円
土地購入や建築にかかる費用は、地域・施設の規模・建物種別によって大きく変動します。そのため、上記の費用はあくまでも目安として参考にしてください。
サ高住の経費
サ高住の運営にかかる各種経費と目安の費用についてです。主な経費の項目は以下のとおり。
- 人件費
- 給食材料費
- 水道光熱費
- 備品代
- 採用経費
- 保守・修繕費
- 賃借料
- 委託料
年間を通した調査の結果、平均すると1ヵ月あたり人件費が約1,505万7,000円で、その他経費は約2,577万円となっています。
賃借料は建物や土地を借りる場合のみ発生する経費です。土地を購入してサ高住を建てる場合は、賃借料は発生しません。
委託料は、食事提供や利用者向けの状況把握・生活相談サービスなどを外部に委託する場合にかかる経費です。例えば、食事提供や送迎、清掃、洗濯などの外部サービスを利用した場合に発生します。
参考:野村総合研究所
サ高住の収入源
サ高住にて、非特定施設入居者生活介護を想定した場合の主な収入源は以下のとおりです。
- 敷金・礼金
- 家賃
- 管理費
- 水道光熱費
- 生活支援サービス費
- 食費
- その他サービス費
介護保険が適用されない利用料におけるサ高住の平均収入は、約3,708万4,000円。サ高住の収入源は不動産賃貸事業と同じで、家賃収入が収益の多くを占めています。
サ高住では食事を提供する義務はありませんが、多くの施設で提供されています。また、サ高住で介護サービスを提供するためには、特定施設入居者生活介護の指定を受けなければなりません。そのため、介護・医療サービスを提供する場合は、外部に委託しているケースが多く見られます。
サ高住と有料老人ホームの設立費用・収益構造・経費の違い
設立費用や経費については、サ高住と有料老人ホームに大きな違いはありません。ただし、有料老人ホームは国や自治体の補助金・税に関する優遇措置を受けられないため、比較的高くなる傾向があります。
収入源による大きな違いは、有料老人ホームでは一時入居金を設定している施設があることです。無料の施設もある一方で、数千万円以上の一時入居金を設定している有料老人ホームもあります。さらに、介護サービスの提供を有料としており、収益の一部になっていますが、運営の難易度はサ高住よりも高くなります。
サ高住の設立費用・経費の削減に役立つ補助金や優遇措置
サ高住の設立費用や、経費削減に役立つ補助金制度、税金に関する優遇措置について解説します。
サ高住の建設に補助金が給付される
サ高住の施設を建築する際に、国土交通省・厚生労働省より創設された「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」の補助金を利用できる場合があります。具体的には、サ高住を建設する事業者を対象に、国から建設費用の一部が補助される制度です。要件を満たした事業者は、以下の補助金制度を利用できます。
床面積 |
補助率 |
補助対象・限度額 |
|
新築 |
30㎡以上 |
1/10 |
135万円/戸 |
25㎡以上 |
120万円/戸 |
||
25㎡未満 |
70万円/戸 |
||
改修 |
1/3 |
195万円/戸 |
|
既設改修 |
10万円~150万円/戸 |
上記の補助金制度を利用できるのは2025年度までです。
出典:国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅の供給促進のための支援措置」
優遇制度により各種税金が軽減される
サ高住を設立・運営する事業者は、「サービス付き高齢者向け住宅供給促進税制」という優遇制度を利用できます。この制度を利用すれば、固定資産税や不動産取得税に対する優遇措置を受けられます。
固定資産税 |
5年間、市町村が税額について3分の2を参酌し、条例で定めた割合を軽減(2分の1以上、6分の5以下) |
|
不動産取得税 |
家屋 |
1戸あたり課税標準から1,200万円控除 |
土地 |
家屋の床面積の2倍に該当する土地面積相当分の価格を減額 |
上記の優遇制度は、2025年3月31日までにサ高住を取得した場合に適用されます。
出典:国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅の供給促進のための支援措置」
有利な条件で融資が受けられる
サ高住を建設する事業者は、住宅金融支援機構が提供する融資制度を受けることができます。「サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資」は、サ高住の建設や改良に必要な資金、登録する中古住宅の購入資金の貸付けを受けられます。主な特徴は以下のとおりです。
- 長期固定金利:15年または35年
- 返済期間:最長35年
- 元金据置期間:1年間
- 融資額:建設費の100%まで
また、上記の融資制度は建設だけでなく、土地を借りる場合にも利用可能です。
出典:住宅金融支援機構「サービス付き高齢者向け賃貸住宅建設融資」
サ高住を運営するメリット
赤字経営が多いとされるサ高住ですが、運営するとさまざまなメリットを得ることができます。
今後も高い需要が見込める
サ高住を運営するメリットの1つは、今後も高い需要が見込まれることです。総務省統計局が発表した資料によると、2022年の65歳以上の人口は約3,627万人でしたが、2030年は3,716万人となっています。さらに、2040年には3,921万人まで増加し、ピークを迎えると推計されました。
また、内閣府の「平成30年版高齢社会白書」によると、単身世帯の高齢者は増加傾向にあることが分かっています。結果として、サ高住の需要は今後も増えることが見込まれています。
出典:総務省「統計からみた我が国の高齢者 -「敬老の日」にちなんで-」
立地の影響を受けづらい
サ高住を運営するメリットとして、立地の影響を受けづらいことが挙げられます。一般的な不動産賃貸事業の場合、駅から近く、周辺に商業施設が充実しているなど、人気が高い立地の確保が重要になります。
一方のサ高住は、必要に応じてスタッフからサポートを受けられるため、利便性が高くない立地に建設しても収益に影響が及びづらいのが特徴です。競合の施設が少ない地域にサ高住を建てることで、より安定した運営を行いやすくなります。
社会貢献につながる
サ高住の運営は、高齢化社会に貢献できる事業です。近年、企業による社会活動が重視されており、事業主はいかに社会貢献につながる取り組みをしていけるのかという視点が必要です。
その点、サ高住の設立や運営は65歳以上の人口増加において需要が高く、高齢者の生活をサポートできるため社会貢献につながります。結果的に、社会貢献しているという企業イメージの向上や、他事業にもよい影響を与える可能性があります。
サ高住を開業・運営するデメリット
次に、サ高住を運営するとどのようなデメリットがあるのかを解説していきます。
広い土地が必要
サ高住を設立するためには、建物や駐車場を作るための広い土地が必要です。サ高住は高齢者が暮らす住宅設備はもちろん、訪問介護サービスやデイサービス、居宅介護支援事業所などを併設するケースが多く見られます。そのため、一般的な賃貸物件よりも広大な土地を確保しなければなりません。例えば、20戸~30戸のサ高住を設立する場合は、約200坪~300坪の敷地が必要です。
法改正・制度改正のリスクがある
サ高住は法律・制度の改正によって収益率が下がるリスクがあります。サ高住は2011年に「高齢者住まい法」が改正されたことで誕生した制度です。
今後、高齢者の需要や施設数の推移を受けて制度内容が改正され、サ高住の事業主にとって不利な状況が生まれる恐れがあります。例えば、これまで利用できた補助金制度や税金の優遇措置などが廃止されたり、サ高住の登録基準が改定される可能性も考えられます。
サービス品質を維持・向上しなければならない
サ高住はサービスの質を維持・向上させ、入居者の満足度を高め続けて運営する必要があります。そのためには、スキルの高い人材やサービスの提供に必要な人員数の確保が欠かせません。
また、業務手順の作成や他施設との差別化など、多くの工夫も求められます。差別化に効果的な取り組み例は、魅力的な介護食の提供や医療・介護施設との連携強化などです。
サ高住のサービスの質が低下すると入居者の満足度だけでなく、空室が増加して収益の減少につながります。これらの理由から、サ高住の経営は一般的な不動産賃貸事業よりも難易度が高いといわれています。
サ高住の運営に重要な経費削減のポイント
サ高住の運営を安定させ、利益率を高めるためには経費削減が必須です。具体的な経費削減のポイントを見ていきましょう。
水道光熱費を抑える工夫をする
水道光熱費は施設の規模が大きくなるほど負担が増えます。まずは、すぐにできる取り組みから始め、継続的に経費削減を行いましょう。水道光熱費の削減に効果的な対策として、以下の取り組みが挙げられます。
- 照明をLEDに変える
- 料金プランや電気会社を見直す
- 節水機能付きのシャワーに変える
- 節水節電に関するガイドラインを作成し、スタッフに共有する
上記の取り組みは明日にでもすぐに実行でき、長期的な経費削減につながります。
業務効率化に取り組む
業務効率化は経費削減に有効な手段です。業務効率を改善する具体的な方法は以下のとおりです。
- 業務手順・日常業務の見直しをする
- 人員配置の最適化を図る
- 業務マニュアルを作成する
- ITツールを導入し、事務作業や情報共有を効率化する
多角的な視点を持ち、複数の業務効率化を進めることで、関連する業務に携わるスタッフの人件費や備品代などの経費削減を実現できます。
外部の介護食サービスを利用する
サ高住で調理済み食材提供サービスを利用することで、調理・メニュー考案に発生する水道光熱費やスタッフの人件費を削減できます。施設内で調理する場合、似たような食材や味付けのメニューが増える恐れがあります。調理済み食材提供サービスなら、メニューの変更も簡単に行える上にフードロスも防止できるため、自施設で調理するよりも効率的な運営が可能です。
また、解凍や湯煎で簡単に調理できるサービスを選べば、調理のスキルがないスタッフでも安定した品質の食事を提供できます。その結果、スタッフの負担軽減や入居者の満足度向上にもつなげられるでしょう。
サ高住の介護食提供に貢献する「まごの手キッチン」
サ高住をはじめとする介護施設での介護食・普通食を提供する際は、調理済み冷凍食材を配送するグローバルキッチンの「まごの手キッチン」がおすすめです。まごの手キッチンでは、和洋中合わせて800種類以上の商品を用意しており、多様なメニューを入居者に提供できます。
栄養のプロである管理栄養士が栄養バランスを考慮したメニューを作成しているため、入居者の栄養管理のサポートも可能です。また、新商品の開発や導入を定期的に行っており、長期利用していても、飽きを感じさせることのない食事を提供できます。
定期利用以外に、人手不足になりやすい朝食や行事食でのスポット利用にも対応しています。まごの手キッチンは、「人件費や水道光熱費を削減したい」「入居者の満足度を高めたい」という介護施設におすすめのサービスです。
サ高住の運営は経費削減が重要!
サ高住の運営は一般的な不動産賃貸事業よりも難易度が高いといわれています。安定した運営を続けるためには、給食材料費や人件費、水道光熱費などの経費削減が不可欠です。サ高住で経費削減をするなら、グローバルキッチンの「まごの手キッチン」をご検討ください。
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