デイサービスの経営事情と経費削減するための方法10個
高齢化社会に伴い、介護サービスの需要が高まっているものの、経営が悪化して廃業に追い込まれるデイサービスも少なくありません。
本記事では、デイサービスの経営事情や赤字を防ぐための経費削減方法について解説します。最後まで読めば、デイサービスの経営事情や経費削減のための具体的な方法を知ることができます。デイサービスの経営者の方やデイサービスの開業を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
デイサービス経営事情について
デイサービスの中には、業績が悪化しているところもあります。独立行政法人福祉医療機構は2023年1月に、2021年度のデイサービスの経営状況を発表しました。貸付先の5,681施設のうち赤字事業者の割合が46.5%であることから、デイサービスの経営は厳しい状況であることが分かります。
デイサービスの経営が赤字である要因として、利用者単価やサービス活動増減差額比率、経常増減差額比率の低下が挙げられます。2020年度の利用者単価は9,412円であるのに対し、2021年度は9,221円と前年度に比べて192円下がっています。また、サービス活動増減差額比率は、2020年度が2.8%で、2021年度は1.5%。経常増減差額比率は2020年度は3.1%ですが、2021年度は1.7%となっています。差額比率の低下は利益率の低下を意味します。
出典:独立行政法人福祉医療機構「2021年度(令和3年度)通所介護の経営状況について」
事業所が不足している
国立社会保障・人口問題研究所が2012年に公表した「日本の将来推計人口」によると、75歳以上の人口は2025年まで急激に増加しており、2045年まで増え続けると発表されました。そのため、デイサービスをはじめとする介護サービスの需要はますます高まっていくことが分かります。
実際に、内閣府が公表した「令和5年版高齢社会白書」によると、有料老人ホームや介護老人福祉施設(特養)、介護老人保健施設(老健)では定員数が増加傾向にあるとしています。しかし、デイサービスの現状は2040年時点で3,723事業所が不足するという予測結果が報告されました。介護サービス全体の需要は高まっているため、デイサービスで儲かる可能性があります。そのためにはデイサービスの事業所を増やして多くの利用者を集客し、赤字から脱却することが重要です。
倒産件数・廃業・解散数は過去最多ペース
介護サービスの需要がある反面、倒産や廃業を余儀なくされている介護事業者は少なくありません。介護保険制度が施行され、介護サービスの体制が本格化したのは2000年とごく最近のことです。しかし、20年も経たないうちの2017年と2019年には、介護事業所の倒産件数が111件と、2000年以降で過去最多になりました。その後、2020年には118件となり、倒産件数は増加の一途を辿っています。
さらに、2022年になると世界的に広がった感染症の影響もあり、介護事業者の倒産件数は過去最多の143件を記録しました。そのうち、デイサービスは前年度から17件多い69件が倒産しています。
2025年までに75歳以上の人口が急増し、2024年には介護報酬や介護保険制度が改正される予定です。デイサービスが事業を継続していくためには、業務効率化をはじめとする労働環境の改善や経費削減などに取り組む必要があります。
出典:株式会社東京商工リサーチ「コロナ禍と物価高で急増「介護事業者」倒産は過去最多の143件、前年比1.7倍増~ 2022年「老人福祉・介護事業」の倒産状況 ~」
デイサービスで赤字を防ぐためにできること
ここまでデイサービスの経営状況について解説してきました。高齢者の人口増加によって介護サービスの需要が高まっているものの、デイサービスの倒産件数が増えていることが分かりました。ここでは、デイサービスが赤字にならないためには、具体的にどのような対策をすればいいのか解説していきます。
デイサービスに赤字事業所と黒字事業所が存在するのは、それぞれの事業所の経費率が異なることも1つの要因です。経費率とは、売上高に対する経費の割合のことです。赤字事業所は黒字事業所に比べて、経費率が高い傾向にあります。そのため、デイサービスで赤字になるのを防ぐためには経費率を抑え、利益を増やすことが重要なポイントとなります。
デイサービスにおける経費とは?
デイサービスで使用されている一般的な経費について詳しく見ていきましょう。デイサービスの業務で使用される主な経費を一覧にまとめました。
経費 |
内訳の例 |
事業所の賃料 |
家賃、駐車場代 |
税金 |
固定資産税 |
送迎用車両の維持費 |
車両のリース代、ガソリン代 |
ICT機器の利用料 |
介護保険請求・記録ソフト、給与計算ソフト |
保険料 |
火災保険、賠償責任保険 |
人件費 |
従業員の年収、賞与、社会保障費 |
水道光熱費 |
水道代、電気代、ガス代 |
消耗品費 |
消毒液、トイレットペーパー、ティッシュ |
通信費 |
インターネット利用料、電話代 |
印刷費 |
プリンター代、インク・トナー代 |
広告宣伝費 |
パンフレット・チラシ代、ホームページ制作料 |
研修費 |
会場費、講師への報酬 |
給食材料費 |
食材費 |
上記の表からも分かるとおり、デイサービスではさまざまな経費が使用されています。これらの費用の中で不要なものを減らせられれば、経費削減につなげることができます。
デイサービスでの経費削減の手順
デイサービスで経費削減に取り組む必要がある場合は、以下の手順を参考に進めていきましょう。
- 現状の経費や収支を把握する
- 経費削減の優先順位をつける
- 具体的な経費削減を行う
- 定期的な見直し・改善を行う
それぞれの手順について詳しく解説します。
現状の経費や収支を把握する
デイサービスの経費削減を進めるためには、何にどのくらいの費用がかかっているのか、全体像を把握することから始めます。経費の項目を洗い出してリストを作成し、1カ月あたりにいくら位の費用がかかっているのかをまとめていきます。経費リストの具体的な書き出しの例を表にまとめました。
上記のように使用する経費を一覧にした表のフォーマットを作成しておくことで、月別の経費がいくらなのかを把握するのに役立ちます。また、年間の経費のシミュレーションや計算をするのに便利です。
経費削減の優先順位をつける
1カ月あたりの経費を把握した後は削減できる経費がないか確認し、それぞれに優先順位をつけます。優先順位は単純に削減したい経費を順番に選ぶのではなく、削減のハードルが低いものと削減による影響が大きいものを分けましょう。
たとえば、事業所の賃料は事業所を移転させなければ削減するのは難しいため、削減による影響が大きいものに分けることができます。一方で、消耗品費は適正な在庫管理を行うことで削減が可能なため、削減のハードルが低いものと判断できます。また、印刷費はICT機器の導入によってペーパーレス化が可能になれば、大幅なコスト削減が可能です。このように、経費削減するとどのような状態になるのかを想定しながら、削減したい経費の優先順位をつけていきましょう。
具体的な経費削減を行う
削減したい経費の優先順位を明確にした後は、経費削減を実行するための具体的な取り組みを進めていきます。具体的な経費削減の方法については後述する「デイサービスで経費削減を行うための具体的な方法」をご覧ください。
デイサービスの通常業務が忙しいと、経費削減の取り組みが後回しになる場合があります。取り組みを実践しなければ経費削減を行うのはもちろん、デイサービスの事業所の業績が悪化する可能性があることを理解しておかなければなりません。デイサービスの経営者だけでなく、現場の従業員に経費削減の必要性を丁寧に説明し、取り組みを進めていくことが大切です。また、取り組みが後回しになるのを避けるために、期限を設けるのも一つの方法です。
定期的な見直し・改善を行う
経費削減を成功させるためには、取り組みを実施するだけでは不十分です。その取り組みが適切に行われたのか、経費削減の効果があったのかを評価・検証する必要があります。1カ月あたりの経費を定期的に見直し、年間予算を超えそうになる場合は対策を講じて改善を図ることが重要です。たとえば、経費削減の効果が見られない場合は、優先順位を変更することで改善する場合があります。
また、経費を削減する方法にムリがあった場合は削減方法を見直し、通常業務をしながらでも従業員が実践できるように工夫しましょう。経費削減の見直し・改善を行った後は、再び取り組みを実施して、PDCAを循環させるように繰り返し進めていくことが経費削減を成功に導くポイントとなります。
デイサービスで経費削減を行うための具体的な方法
デイサービスで経費削減を行う場合、それぞれの経費によって取り組むべき方法は異なります。経費別に適切な削減方法をしなければ、経費削減の効果を得られません。
ここからは、デイサービスで経費削減を行う際の具体的な方法を解説します。デイサービスでの経費削減を実現するための具体策を探している方は、ぜひ参考にしてください。経費削減方法を紹介する主な経費は以下のとおりです。
- 人件費
- 印刷費
- 通信費
- 水道光熱費
- 消耗品費
- 研修費
- 損害保険
- 固定資産税
- 賃料
- 食材費
人件費を見直す
人件費を削減する具体的な方法として、以下のような取り組みが挙げられます。
- 業務負担や人員配置を見直す
- ICT機器やツール・システムを導入する
- 残業時間を減らす
人件費を見直す際に避けて通れないことは人員配置です。適正な人員を配置することで、特定の従業員への業務負担を減らせます。ICTの導入によって業務を減らすことができれば、その業務にかかっていた時間や残業時間の削減につながります。
人件費を見直す際の注意点は、人件費を削減しすぎると介護サービスの質を下げるリスクが伴うことです。業務にあたる人数が減れば、これまで通りの介護ケアを行えなくなる可能性があり、介護サービスの質が下がるおそれがあります。介護サービスの質の低下は利用者やその家族の満足度を下げることにつながるため、人件費を見直す際は注意が必要です。
印刷費を見直す
印刷費は印刷物にかかる経費のことです。印刷費の見直しに効果があるとされる主な方法は、以下のとおりです。
- 事業内で使用する印刷物はモノクロ印刷にする
- インクやトナーは正規品ではなく、リサイクル品を使用する
- 1枚あたりのコピー料金が安い機器をリースする
印刷物をすべてカラー印刷するとコピー機のインクやトナーの減りが早くなり、印刷費が増えてしまいます。事業内で回覧する書類や、カラー印刷でなくても業務に支障が出ないものをモノクロ印刷にすることで、印刷費の削減につながります。
コピー機のインクやトナーは正規品を使用するのが一般的です。しかし、リサイクル品に切り替えることで、インクやトナーの購入費用を減らすことができます。コピー機をリースしている場合は、1枚あたりのコピー料金が安い機器に乗り換えることも検討しましょう。
通信費を見直す
通信費は、インターネットの接続や固定電話、スマートフォンに関する経費です。通信費を見直す場合に参考になる取り組み例として、次のようなものが挙げられます。
- 利用料が安いインターネット回線に切り替える
- 電話料金が安いスマートフォンに乗り換える
- 乗り換えが難しい場合は契約プランを見直す
- 追加オプションの中に不要なものがある場合は契約を解除する
デイサービスの事業所では、インターネットやスマートフォンの利用が欠かせません。そのため、事業所の拠点数や従業員の人数が多いほど、通信費を見直すことで大幅な経費削減が期待できます。インターネット回線やスマートフォンの契約を見直すだけでなく、使用されていない端末がある場合は契約解除をするのも経費削減に有効な手段です。
水道光熱費を見直す
水道光熱費を削減する具体的な方法は、以下のとおりです。
- 節水機器を導入する
- 電力会社や契約プランを見直す
- 省エネが可能な器具に切り替える
- 定期的にエアコンのフィルターをきれいにする
水道に節水機器を取り付けることで水の使用量を減らせます。電気代を削減したい場合は、現在の契約プランを安い料金プランに変更する、契約する電力会社を切り替える方法があります。照明器具の電球を省エネの効果が高いLEDに変えるのも有効な手段です。
エアコンのフィルターが目詰まりを起こしていると暖房や冷房の効きが悪くなるため、定期的にフィルターを掃除しましょう。他には、使用していないときは蛇口を閉める、照明を消す、コンセントを抜くなどの方法も水道光熱費の削減につながります。
消耗品費を見直す
消耗品費の削減に効果的な方法として、以下のようなものが挙げられます。
- 消耗品を安く購入できる発注先を探し、切り替える
- まとめ買いで割引サービスを利用する
- 品質を重視するものは、同品質で購入価格が安いものに変更する
消耗品は一つひとつの価格が安いものの、デイサービスの事業を続ける中で定期的に購入が必要となるため見直しを図ることで経費削減につながります。消耗品の価格は業者によって異なるため、より安く購入できる発注先に切り替える必要があります。業者によって、まとめ買いすることで送料が無料になったり、割引が適用されるお得なサービスがある場合は利用しましょう。紙の種類や品質を重視しなければならないものがある場合は、品質が同等以上かつ、できるだけ安い価格のものに変更することをおすすめします。
研修費を見直す
研修費とは、デイサービスの事業所内で開催する研修にかかる費用のことです。外部で研修を受ける場合は参加費用が発生します。事業所で開催する場合でも、外部のイベント会場や会議室を借りる場合は会場費もかかります。外部から講師を招く場合は、報酬も用意しておかなければなりません。研修費を削減する具体的な方法は以下のとおりです。
- 外部研修の参加者の人数を絞る
- 外部研修で得た知識やノウハウなどを事業所内で情報共有する
- 無料またはリーズナブルな費用で利用可能な研修動画を研修で使用する
外部研修の参加者を少人数に絞り込むことで、参加費用を削減できます。参加者が研修で得た情報を事業所内で共有すれば、介護サービスの質の向上や業務効率化につなげることも可能です。
損害保険を見直す
損害保険には、火災保険や賠償責任保険などがあります。火災保険はデイサービスの事業所が火災や自然災害に遭い、被害を受けた場合に保険会社から補償を受けられる保険です。賠償責任保険は、事業所内で食中毒やケガ、事故などが発生した場合に保険金を受け取れる保険です。損害保険を見直して経費削減する具体的な取り組み例は以下のとおりです。
- 保険料が安い保険や保険会社に切り替える
- 不要なオプションを解除する
- 専門会社やFP(ファイナンシャルプランナー)に依頼して保険を見直す
規模が大きい事業所になると保険料が高くなる傾向にあるため、減らすことができれば大幅な固定費の削減になります。複数の保険会社の商品を扱う専門会社やFPに相談して、事業所に合った保険を見直すことも大切です。
賃料を見直す
賃料には、デイサービスの事業所の家賃や借りている駐車場の利用料が挙げられます。老健や特養など、介護施設の経営のために土地や建物を借りる場合、20年前後で長期契約する傾向があります。そのため、賃料の値下げ交渉が成功すれば、大幅な経費削減が可能です。値下げ交渉の方法を紹介します。
- オーナーに直談判して賃料の値下げをお願いする
- 不動産会社に賃料の値下げ交渉を依頼する
ただし、以下のケースに該当する場合は、賃料の値下げができません。
- 契約書に賃料改定不可と記載されている
- 入居期間が浅く、1~2年未満である
- 周辺相場よりも安い賃料が設定されている
賃料の値下げ交渉が難しい場合は、交渉が得意な専門会社に依頼するのも一つの方法です。
食材費を見直す
デイサービスの事業所内で食事を作る場合、さまざまな経費が発生します。事業所で従業員が食事を作る際に発生する経費は以下のとおりです。
- 食材費
- 人件費
- 水道光熱費
- 消耗品費
食事の提供にかかる経費の中で、食材費と人件費が占める割合は大きいため、見直しが必要です。食材費と人件費の削減に有効な方法として、配食サービスや食材提供サービスの利用が挙げられます。
外部で調理された料理や食材を導入することで、食材を一から購入し、調理する手間がなくなる上に、食材費の削減が可能です。また、事業所内で献立を考える手間や食事を作る時間・労力を減らすことで調理をする従業員の負担を軽減できます。食材費を減らして事業所内で食事を作る回数が減れば電気・水道・ガスの使用量が下がるため、水道光熱費や消耗品費の削減にもつながります。
まとめ
デイサービスの事業所で経費削減を行う場合、さまざまな方法があります。経費削減は継続して行う必要があるため、導入しやすい取り組みから始めるようにしましょう。経費削減の取り組みの中でも、介護食調理の際の人件費の節約は介護食サービスを導入することで始めることができます。グローバルキッチンの「まごの手キッチン」の利用がおすすめです。
まごの手キッチンを導入すれば、調理の手間や人件費を抑えることが可能です。毎月の献立作成は栄養のプロである管理栄養士が立てるため、利用者に栄養バランスのとれた食事を提供できます。高齢者施設で提供する食事や介護食を検討されている方向けに、無料サンプルを送付しています。介護施設職員の方や経営者の方は一度お試しください。
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