舌でつぶせる介護食のレシピを紹介!食形態や調理のポイントについても解説
舌でつぶせる介護食とは、噛む力や飲み込む力が低下している人向けに提供される食事の1つです。舌でつぶせる介護食があると知っていても、レシピや調理方法が分からずに具体的なイメージが湧かない人もいるでしょう。
本記事では、舌でつぶせる介護食のレシピや調理する際のポイント、食形態別の調理のポイントなどを解説します。舌でつぶせる介護食を施設で調理するのが難しい場合におすすめのサービスも紹介しているため、ぜひ参考にして下さい。
舌でつぶせる介護食とは「やわらか食(ソフト食)やムース食」のこと
舌でつぶせる介護食とは、舌だけでつぶせるようにやわらかく調理された食事のことです。主に「やわらか食(ソフト食)」や「ムース食」と呼ばれることが多いです。やわらか食(ソフト食)は、歯ぐきや舌で簡単につぶせるやわらかさになるまで調理した食形態です。食材の種類によって調理方法が異なり、煮たり蒸したりする調理方法が適しています。ムース食は、食材をミキサーにかけてペースト状にしてから、ゲル化剤で固めてムース状にした食形態です。噛む力の低下に加え、飲み込みが難しい人に向いています。
舌でつぶせる介護食のレシピを考える前に「適切な食形態の確認」をしよう
食形態とは、噛む力や飲み込む力の状態に合わせて区分される食事の形態のことです。個々の状態に合わない食形態の介護食を提供すると、飲み込みがうまくできず誤嚥(食べ物や液体などが気管に入った状態)や肺炎、窒息を引き起こす恐れがあります。安全に介護食を提供するには、高齢者の噛む力や飲み込む力の状態にあった食形態を選ぶことが重要です。
噛む力が必要な食形態と良好な健康状態は密接に関連すると考えられています。良く噛み、唾液を分泌させることで口腔内の環境が整い、また、唾液の消化酵素により、消化を助ける働きも期待できます。さらに、口を動かすことで咀しゃくに関する筋力維持向上にもつながります。そのため、噛む・飲み込む力が低下していない人にはできるだけ普通食に近い食事がおすすめです。反対に、機能が低下している人には、誤嚥のリスクがある普通食の提供は避けましょう。
「ユニバーサルデザインフード」を参考に嚥下機能を把握する
ユニバーサルデザインフードとは、噛む力や飲み込む力の状態別にかたさや粘度の規格が決められた食品のことです。区分は、「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の4つです。下記の区分表は、高齢者の食形態を検討する際に役立ちます。
「容易にかめる」の区分は、飲み込む力に問題がない状態で、一般的なかたさのごはんや厚焼き玉子などを提供します。「歯ぐきでつぶせる」の区分は、食材によっては咀しゃくや飲み込むことが難しいため、やわらかいごはんやだし巻き卵などの食べやすい食事がよいでしょう。
「舌でつぶせる」の区分は、細かく刻まれたやわらかい食材であれば食べられる状態で、お粥やスクランブルエッグのような、噛む必要がない食事が目安です。「かまなくてよい」区分は、固形物やとろみがない水分を摂ることが難しい状態で、ペースト状のお粥や具のない茶わん蒸しなどを提供します。
舌でつぶせる介護食をつくる時のポイント
舌でつぶせる介護食のレシピを基に調理する場合は、食材選びや調理方法などが重要です。本章では、舌でつぶせる介護食をつくる際に知っておきたいポイントを解説します。
やわらかい食材・材料を選ぶ
舌でつぶせる介護食をつくる際は、やわらかい食材や材料を選ぶ必要があります。固いものや水分が少なくパサパサするもの、食物繊維が多いものは、噛む力が低下している高齢者には食べづらい場合があるため、できるだけ避けましょう。やわらかい食材の例は以下の通りです。
- 豆腐や納豆、大豆水煮
- 脂がのった肉や魚
- ハム、肉団子、魚肉ソーセージなどの肉・魚の加工品
- とろろ昆布
- バナナ など
食物繊維が多いごぼうや、噛み切りにくいタコやイカなどは介護食の食材として向いていません。どうしても使いたい場合は、調理方法を工夫して食べやすくしましょう。
とろみをつけるなど調理方法を工夫する
食材の中には、とろみがない飲み物や水分が少ない物など、高齢者が食べにくい物もあります。このような食材を使う際は、食べやすくする工夫が必要です。具体的な食材と調理時の工夫は以下の通りです。
- 水やお茶、みそ汁などのとろみがない飲み物
- 水やお茶はゼラチンでゼリー状にするか、増粘剤でとろみを付けて飲み込みやすくする
- みそ汁は増粘剤でとろみを付ける など
- パンやクッキーなどの水分が少ないもの
- パンはミルクと煮てパン粥にする
- クッキーはミルクに浸す
- そぼろや固ゆでたまごなどの口の中でまとまりにくいもの
- そぼろは餡と絡めてまとめる
- 固ゆでたまごはマヨネーズであえる など
- タコやイカ、ごぼうなどのかみ切りにくいもの
- タコやイカはすり身や、やわらかいつみれ状する
- ごぼうはすりおろしたり、ミキサーを用いてピューレ状にする など
- 青菜類やわかめなどの口の中に貼り付きやすいもの
- 青菜類は主食と炊いておじやにしたり、茹でたものを刻みハンバーグに混ぜたりする
- わかめは細かく刻みほかの食材と合わせる など
- 柑橘類や酢の物などの酸味が強いもの
- 他の調味料や食材と混ぜて酸味を薄める
- 甘みを加え、ゼリーやスムージーなどにする
効率的に調理可能な器具を使う
舌でつぶせる介護食のレシピをつくる際は、普通食よりも食材を小さく刻んだり、とろみをつけたりと、工程が多く手間がかかります。調理の手間を省くには、効率的に調理できる調理器具を使用することが重要です。例えば、以下の調理器具の使用をおすすめします。
- 圧力鍋(短時間で食材をやわらかく調理する)
- ミキサー(食材を液体状に加工できる)
- フードプロセッサー(水分が少ない食材を粉砕できる)
食事の栄養バランスや摂取カロリーも考慮する
特定の食材やレシピばかり使用すると、カロリーや栄養素をバランス良く摂れなくなるため注意が必要です。栄養素については、五大栄養素と呼ばれる「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」「ビタミン」「ミネラル」のバランスに注意しましょう。
次回改定の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、高齢者のフレイル予防のために、たんぱく質を積極的に摂取することを推奨する方針が示されています。フレイルとは、加齢によって心身が衰えた状態のことです。また、65歳以上の高齢者に必要な摂取カロリーは以下の通りです。
身体活動レベル |
Ⅰ(低い) |
Ⅱ(普通) |
Ⅲ(高い) |
男性(65~74歳) |
2,100 |
2,350 |
2,650 |
男性(75歳以上) |
1,850 |
2,250 |
- |
女性(65~74歳) |
1,650 |
1,850 |
2,050 |
女性(75歳以上) |
1,450 |
1,750 |
- |
舌でつぶせる介護食のレシピを紹介!食形態や調理のポイントについても解説
舌でつぶせる上に、口の中でまとまりの良い介護食は、つなぎの食材や固形状にするためのゲル化剤を使用してつくることができます。つなぎの食材の例は卵や長いも、マヨネーズなどです。ゲル化剤には加熱が必要なものや加熱しなくても食材が固形化するものなど、さまざまな種類があり、混ぜる量によって出来上がりの食感やかたさが変わります。よりなめらかに仕上げるなら、ミキサーやブレンダーの使用がおすすめです。
また、舌でつぶせる介護食は高齢者の飲み込む力の状態に合わせた調理方法を選びましょう。本章では、舌でつぶせる介護食のレシピを3種類紹介します。
つなぎを使った介護食(サバの味噌煮)
つなぎを使用して、舌でつぶせるかたさに仕上げたサバの味噌煮の介護食レシピを紹介します。サバの味噌煮は調理済み食品を使用すれば調理時間を短縮できます。使用する材料は以下の通りです。
- サバの味噌煮(80g)
- 卵白(30g)
- 長いも(30g)
次に、舌でつぶせる介護食のつくり方を紹介します。
- サバの味噌煮のサバとタレを分ける
- サバと卵白、長いもをブレンダーにかけて、なめらかにする
- 2をラップで包み、切り身に似た形に整え、電子レンジで2分加熱する
- 器に3を盛り付け、1のタレをかける
ゲル化剤を使用した介護食(サバの味噌煮)
ゲル化剤を使用したサバの味噌煮の介護食レシピを紹介します。ゲル化剤を使用するため、高齢者一人ひとりの飲み込む力に合わせてかたさの調整ができます。使用する材料は以下の通りです。
- サバの味噌煮(200g)
- お湯(100ml)
- ゲル化剤(1.5g※種類によって異なる)
ゲル化剤を使用した介護食のレシピのつくり方を紹介します。
- サバの味噌煮をサバの身とタレに分ける
- ミキサーにサバとお湯を入れ、なめらかにする
- ゲル化剤を数回に分けて入れ、しっかり混ざるまでミキサーにかける
- バットや型に3を流し入れ、冷ましながら固める
- 器に4を盛り付け、1のタレをかける
ゲル化剤を使用した介護食(お好み焼き)
お好み焼きをミキサーにかけ、ゲル化剤でかためる介護食レシピを紹介します。ゲル化剤は種類によって添加量が異なるため、商品情報を確認し調整しましょう。味が薄くならないよう、だし汁で加水するのがポイントです。使用する材料は以下の通りです。
- お好み焼き(250g)
- だし汁(250ml)
- ゲル化剤(2.5g※種類によって異なる)
ゲル化剤を使用した介護食のつくり方を紹介します。
- ミキサーにお好み焼きとだし汁を入れ、なめらかにする
- ゲル化剤を加え、しっかり混ざるまでミキサーにかける
- 縁のある丸い器に流し入れ、冷ましながら固める
- お好みでマヨネーズやお好み焼きソースをかける
介護食を簡単に提供できる「まごの手キッチン」の利用も検討しよう
「まごの手キッチン」は、高齢者施設・介護施設向けに調理済みの冷凍食材を配送するサービスです。調理済みの冷凍食材は、冷蔵庫での解凍や湯煎などの簡単な方法で調理でき、介護職員の調理作業の負担を軽減しながら質の安定したお食事が提供できます。
介護食の献立は、食と栄養管理の専門家の管理栄養士が栄養バランスを考えて作成しているため、毎日のレシピを考える時間と労力を削減できます。削減した時間は介護業務や入所者様とのコミュニケーションに使えるため、スタッフ・入所者様の満足度向上も期待できるでしょう。
商品は和・洋・中を合わせて800種類以上のアイテムがあり、入所者様の状態や食べ物の好みに合わせた食事を選べます。また、入所者様に食事の楽しさを感じてもらえるように、季節に合わせた行事食を月に1回提供しています。
舌でつぶせる「ムース食」や歯ぐきでつぶせる「やわらか食」の取り扱いもあり、噛む力や飲み込む力が低下した入所者様に食べやすい食事を提供したい場合にもおすすめです。
レシピを参考に舌でつぶせる介護食をつくってみよう
舌でつぶせる介護食は噛む力や飲み込む力が低下した高齢者のための食事で、状態に合わせて適切な食形態やレシピを選ぶことが重要です。ただし、舌でつぶせるかたさに調理するには時間や労力がかかるため、介護職員の負担を減らすためにも「まごの手キッチン」の利用をおすすめします。
「まごの手キッチン」では、高齢者施設で提供する食事や介護食を検討されているご施設様へ、無料サンプルをご用意いたします。ぜひ一度お試し下さい。