介護食の種類は5つ!それぞれの特徴と調理のポイント・食材の選び方などを解説
介護食にはさまざまな種類があるため、介護施設の経営者や職員が特徴を知ることで高齢者一人ひとりにあった食事を提供することも可能です。この記事では、介護食の特徴や種類ごとの食材の選び方を解説します。
また、介護施設で介護食を手作りするときに気を付けることや、高齢者でも食べやすいと感じられる工夫についても解説しているため、ぜひ役立ててください。
介護食とはそもそも何か?
介護施設で提供されている介護食とは、食材を刻んで小さくしたり飲み込みやすいようにやわらかく調理・加工したりしなければ自力で食べられないという方のために調理されています。
繊維が多くて自力で噛み切ることができない場合は食材を刻んで細かくしたり、やわらかくなるまで加熱をしたりなめらかな食感に加工したりすると、高齢者が食べやすい食事に工夫できます。
介護施設に入居されている高齢者は活動範囲が狭まりやすく日々の食事が生きがいであり楽しみであるため、食事を喜んで食べてもらうにはさまざまな工夫を凝らす必要があります。食べづらい食事を提供し続ければ食事量が低下して健康を維持するために必要な栄養が不足し、低栄養状態を引き起こしかねません。
高齢者の食欲減退や栄養バランスの偏りを回避するためには、入居者一人ひとりの状態に合わせた介護食を導入することが望ましいでしょう。
介護食の食形態は大きく分けて5種類
介護食には5つの食形態があります。その中でも一般的に介護施設で採用されている種類に分けて、特徴や向いている症例、手作りするときの注意点などを解説します。
きざみ食
きざみ食は、普通食のままでは食材が大きすぎて噛めない方に対応できる食事です。
きざみ食の特徴
きざみ食は、普通食で使用されている食材を2~5mm程度の大きさに刻む食形態です。きざみ食は噛みにくい食材を刻んで小さくしているため、食べ物を噛む力が低下している方でも食べられます。きざみ食は、入居者一人ひとりの噛む力や分泌される唾液量、口内の状態などを目安に適度な大きさに切る必要があります。
どんな症例に向いているか
きざみ食は、噛む力が低下しているものの、飲み込む力は維持できている場合におすすめです。また、開口の負担が軽減されるため、口を大きく開けられないという方にも向いています。ただし、極端に唾液の分泌量が少なかったり、飲み込む力が低下していたりする方には不向きとなります。
調理のポイントや注意点
きざみ食を調理するときに気をつけたい点は、食べる人にあわせてとろみで調整することです。きざみ食は、食材や調理方法によっては口の中で食塊ができにくい場合があり、誤嚥による肺炎のリスクが高まります。
パサパサした水分の少ない食品は刻んで小さくするとまとまらず、のどに張り付くこともあるため飲み込むのも大変です。水分の少ないものはむせや誤嚥につながりやすいため、飲み込みづらいことが想定される料理にはとろみをつけましょう。
やわらか食(ソフト食)
やわらか食とは、プリンのやわらかさを目安に調理・加工された食事です。
やわらか食の特徴
やわらか食とは、舌や歯ぐきだけでも簡単につぶせるように調理・加工された食事のことです。食材がやわらかく調理・加工されているため、食べ物を噛む力が弱くても食べやすいとされています。
やわらか食は、やわらかくなるまで煮込んだり、口の中でまとまりづらいものはすりつぶしてペーストにしたりと工夫してから、見た目に配慮して形を整えます。
どんな症例に向いているか
やわらか食が向いている症例は、噛む力だけでなく飲み込む力も低下しているケースです。提供される食事はすべて舌や歯ぐきで簡単につぶせるため、歯がない場合でもストレスを感じずに食べることができます。
また、唾液の分泌量が少ないと食塊を飲み込むのが大変になるため、食べる人の状態をよく観察した上で適切な食形態を検討するとよいでしょう。
調理のポイントや注意点
調理する際のポイントは、一定のやわらかさになるように目安を決めることです。やわらかくてツルっとした食感のプリンは舌や歯ぐきでつぶせる上に、のどごしもよいため、やわらか食の目安とされています。
魚や肉を使用する場合は脂身の多い食材がおすすめです。野菜は繊維と垂直になるようにカットすると、やわらかく調理できます。
ムース食
ムース食とは、飲み込む力が低下した方向けにムース状に加工した食事です。使用する食品の水分量や調理の仕方によって硬さの微調整が必要です。
ムース食の特徴
ムース食とは、一般食をムースのやわらかさになるように加工した食事のことです。なめらかでやわらかい食感を再現することで、噛んだり飲み込んだりする力が低下している場合にも対応でき、施設の高齢者に安心して食べてもらえます。
ムース食をつくるためにはミキサーを使用して液状にする、ゲル化剤を混ぜる、型を使用して成形するといった作業工程に分けられています。どのような種類の食品や調理法を用いるのかによってやわらかさ・水分が異なるため、ゲル化剤の使用量の調整が必要です。
どんな症例に向いているか
ムース食が向いている症例は、飲み込む力が著しく低下していて誤嚥のリスクが高いケースや、食べ物を飲み込む機能に障害があるケースが挙げられます。加齢によって飲み込む力が低下すると食材が誤って気管に入ってむせやすくなるため、のどごしが悪い食事の提供は避けましょう。
ムース食はスルッと滑るようにのどの奥へ食べ物を送ることができるため、飲み込む機能に障害がある方でも安心して食べられます。
調理のポイントや注意点
素材そのものをムース食として利用できる食品を取り入れることが調理するときに重要なポイントです。ムース食をすべて手作りする場合は多くの人手と手間がかかります。卵豆腐やババロアのように完成された調理品を用いることで手間を省けます。
また、ムース食は水分で薄めてつくることから十分な栄養を摂れない可能性があるため、ゼリータイプの栄養補助食品で補給するとよいでしょう。
ミキサー食
ミキサー食は、ものを噛んだり飲み込んだりする力が低下している方向けにつくられている食事です。
ミキサー食の特徴
ミキサー食とは、調理済みの食品をミキサーで液状にしてとろみをつけた食事です。トロトロの食感になるように、料理や食材ごとに水分を足してミキサーにかけてポタージュ状にしているため、噛み砕いたり噛み切ったりする必要がありません。また、飲み込む力が弱い方でもとろみがあるため安心して提供できます。
ミキサー食は、前述のやわらか食・ムース食では対応できなくなった場合に提供されています。
どんな症例に向いているか
ミキサー食は、咀しゃく機能がほとんど働いていないケースや飲み込む力が弱くなっているケースに向いています。ミキサー食は、液状にしたものをとろみ剤を混ぜてポタージュのやわらかさにしているため、口の中でしっかりとした食塊を作れません。飲み込みの反応が見られない方にミキサー食を提供すると気管に流れ込んでしまい、誤嚥のリスクが高くなるため、提供する人の状態を見極めましょう。
調理のポイントや注意点
調理する際のポイントは、一定の硬さになるようにとろみ剤の使用量を調整することです。ミキサー食の硬さの目安はケチャップのやわらかさです。とろみ剤を入れすぎるとベタつくため、のどに張り付きやすくむせたり誤嚥したりします。とろみ剤を加えるときは、ケチャップのとろみ加減をイメージしながら量を調整することが大切です。
流動食
流動食は、手術後に食べられる術後食や胃の働きが弱くなっている方に出される食事です。十分な栄養が摂れないため低栄養の方への提供はおすすめできません。
流動食の特徴
水のように飲めることが流動食の主な特徴です。流動食は消化器官への負担を抑えられる食事として知られています。例えば、だし汁や水などの水分と料理をミキサーにかけたものや具を除いたスープ、お粥の上澄みである重湯などが挙げられます。
どんな症例に向いているか
流動食が向いている症例は、手術後に初めて食事を食べるケースや胃の働きが弱まっているケースが挙げられます。流動食はストローで吸い上げることができるため、寝たきりの方にも提供できます。
注意点
流動食を低栄養の方に提供すると栄養失調に陥るリスクが高まるため、避けたほうがよいでしょう。流動食に栄養価が高い市販の濃厚流動食をプラスして提供することで、低栄養への対策ができます。
介護食に適した食材の種類
どの食材が介護食にあっているのかを知らずに調理すると、食形態にかかわらず高齢者に食べたいと思ってもらえる食事を提供できないため、完食してもらえないかもしれません。ここでは、介護食に適している食材について詳しく解説するため、介護食を手作りする方は以下で紹介する食材を参考にすると不向きな食材を選ぶことを避けられます。
介護食に向いている食材
介護食を手作りする場合は、調理方法を工夫すれば異なる食形態に対応できる食材を選ぶことが大切です。介護施設でどのような介護食を提供するのかによって異なります。例えば、きざみ食ややわらか食(ソフト食)を提供する場合は食材を刻む、食材をじっくり煮込んでやわらかくするなどの作業工程が増えるため、介護職員の負担が増えてしまいます。
両方の食形態に対応する食品を選択すれば、噛み切ったり飲み込んだりする力が低下している方にも安全な食事を提供できる上に、職員の調理の手間も減らすことも可能です。
そのままで食べられるやわらかい食材
介護食に向いている食材はそのままでもやわらかくて噛みやすいものや、簡単に飲み込めるものを指します。例えば脂の多い魚や肉、豆腐、じゃがいも、バナナ、ヨーグルトなどが挙げられます。
脂の多い魚や肉は加熱後に硬くなりにくいため、噛む力が低下している場合でも比較的食べやすい傾向にあります。バナナやヨーグルトはそのまま食べられる食材であるため、やわらかいものなら食べられるという方に向いています。
ぬめりのある食材
ぬめり気のある食材も介護食に向いています。ぬめりのある食材は適度なとろみがついているので食塊を作りやすくなります。また、ぬめりがとろみ剤の代わりになることで、飲み込む力が弱くなっている高齢者でも飲み込みやすく、誤嚥を防ぎやすくなります。ぬめりのある食材の例は、納豆やモロヘイヤ、オクラ、なめ茸などです。
介護食に不向きな食材
介護食に使用する食材を選ぶ際に避けるべきものは、水分が少なくてパサパサしやすいものや口の中でまとまりづらいものです。パサパサしていると唾液が分泌されても食べものが唾液を吸収して口の中が乾いてしまい、バラバラな状態のまま飲み込むため、むせやすくなります。そのため、水分が少なく乾燥した食材は避けることをおすすめします。
パサつきやすい食材には、パンやビスケットなどが挙げられます。口の中でまとまりづらいとされる食品は、おからやひき肉などです。
また、レンコンやゴボウなどの繊維が多く硬い食品も介護食に不向きです。
噛みづらい食材や繊維が多く硬い食材は刻んで噛みやすい大きさにしても食べづらさは解消されません。
例えば、噛みずらい食材は弾力があるかまぼこやこんにゃくなどの食品が該当します。繊維が多く硬い食材として、ゴボウやレンコン、イカなどが挙げられます。
介護食を食べやすくする工夫
ここでは、介護食を食べやすくする工夫を紹介します。実際に介護施設での調理に取り入れれば、高齢者の状態にあった食事を提供できます。例えば、食品そのものに水分が少なく口に入れてもパサつくものは、牛乳やだし汁などの水分を加えてふやかすと食べやすくなります。
ゆで卵に代わる食べやすい卵料理を提供したい場合は、高齢者の状態に合わせて卵を蒸して温泉卵をつくったり、炒めてスクランブルエッグにしたりして提供するとよいでしょう。ハンバーグやミートローフなどのひき肉料理は、卵やマヨネーズ、生クリームなどの食材をつなぎにすると、しっとりとした状態に仕上がります。
高齢者に美味しく食べてもらうための配慮
最後に、高齢者に介護食を美味しく味わってもらうためには、好みの味付けにしたり献立のバリエーションを増やしたりすることをおすすめします。また、食事を楽しめる雰囲気や扱いやすい食器を用意することで食事を楽しんでもらえます。詳細は以下で解説します。
好みの味付けにする
介護施設で高齢者に喜んでもらえる介護食を提供するなら、高齢者の好みの味付けを把握しておくことが大切です。仮に、一流のシェフがつくった料理を介護施設で提供したとしても、食べる人の好みと異なれば食べてもらえない場合があります。
とくに高齢者は味覚が鈍って塩味を感じづらくなるため、味付けを工夫しないと食べてもらえません。だし汁を使ってだしの旨味を効かせたり、薬味をのせたり、香辛料を加えたりしてアクセントにすることもおすすめです。風味が豊かな味付けにすれば、塩味を感じにくい方にも食事を楽しみにしてもらえるでしょう。
献立のバリエーションを多くする
介護食に使用する食材の種類や献立が同じものだと、高齢者を飽きさせてしまう恐れがあります。魚を使用したら次に使用するメイン食材は肉や豆腐にする、昼を洋食の献立にした場合は夜を和食にするなど、食材や献立が続かないように提供する献立のバリエーションを増やすようにしましょう。
季節ごとに使用する食材を替えたり、既存の献立の主菜と副菜を入れ替えたりするのがおすすめです。献立が思い浮かばない場合は、高齢者の好きなメニューや食べたい料理を聞いて献立に加えることもおすすめです。
食事を楽しめる雰囲気を作る
美味しく食べられる介護食を提供しても、雰囲気がよくなければ食事を楽しめない場合があります。黙々と1人で食事をする環境よりも、コミュニケーションをとりながら食べるほうが食事を楽しめる場合も少なくありません。
食卓をコーディネートしてテーブルを演出したり、話したい方と会話を楽しめるように座席を選択制にしたりすると食事を楽しめる雰囲気をつくれます。
使いやすい食器を用いる
高齢者の方の中には、麻痺や障害などによって体を上手く動かせない方もいます。自助食器を使用することで、体が不自由な高齢者でも自力で食事ができるようになって自信をつける手助けになります。
自助食器とは、滑り止めや器の側面に傾斜がついている食器です。スプーンでも食材をすくいやすく食器が滑らないので、片手が麻痺の方でも自分で食事ができます。
グローバルキッチンでは種類豊富な献立を提供
介護食の種類は5つの食形態に分けられます。食べやすい介護食を作るためには、それぞれ調理時のポイントや注意点に気をつけて調理しましょう。入居者に食事を美味しく味わってもらうためには、バリエーションのある献立を用意することが重要です。
グローバルキッチンの「まごの手キッチン」では、高齢者が食べやすい「普通食」と、介護食の「やわらか食(ソフト食)」や「ムース食」をご用意しています。食と栄養のプロである管理栄養士が献立を作成しており、和洋中800種類以上のバリエーション豊富な商品を用意しているため、飽きのこない食事を提供できます。
活用例として、人手不足になりやすい日の朝食にスポット利用したり、1日3食を定期利用することもできるため、入居者様にメリハリのある介護食を美味しく味わってもらえます。高齢者施設で提供する食事や介護食を検討されている方向けに無料サンプルを送付しているため、介護施設職員の方や経営者の方は一度お試しください。
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