介護食の区分とは?4つの分類方法と5種類の食形態をご紹介
介護食の区分とは、食べ物を噛んだり飲み込んだりする機能の状態に合わせた食事の分類です。介護食の区分がわかると、介護施設の利用者一人ひとりの食事のレベルに合わせて適切な介護食を提供できるようになるでしょう。
本記事では、介護食の区分を知りたい介護施設の経営者や職員の方に向けて、介護食の分類方法や食形態の種類を解説します。介護食を提供する際におすすめのサービスも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
介護食とは
介護食とは、日常生活において介護が必要な高齢者や、食べ物を噛む力、飲み込む力が弱い方向けに開発された食事です。高齢者は、加齢によって咀しゃく・嚥下(えんげ)機能が低下し、今までと同じ食事を食べられなくなる方も少なくありません。咀しゃくとは、食べ物を噛むことを意味します。嚥下は、食べ物を飲み込む動作のことです。
介護食は咀しゃく・嚥下機能が低下した方でも噛みやすく飲み込みやすくするために、蒸す・煮るなどの調理法を利用して、食材をやわらかくしたり加工したりしています。例えば、咀しゃく・嚥下機能がやや低下している方向けにやわらかく調理した食事や、調理した食材をペースト状に加工した食事が一例です。
介護食が介護を必要とする高齢者の咀しゃく・嚥下機能のレベルに合わせた食事であるのに対し、高齢者向けは普通食と同じ食事の食材を一口大に刻む、水分補給のために水分が多いメニューを積極的に加えるなどの工夫を凝らした食事を指します。
介護食の評価基準は4つ
介護食の区分は複数の制定機関によって異なる分類がなされています。よく知られている介護食の区分として4つの評価基準が存在します。4つの評価基準を確認しておくことで、利用者の状態に合った介護食を提供しやすくなるでしょう。ここでは、4つの制定機関ごとの介護食の分類と評価基準を解説します。
ユニバーサルデザインフード(UDF)
日本介護食食品協議会では、2003年にユニバーサルデザインフード(UDF)を制定しています。ユニバーサルデザインフード(UDF)とは、咀しゃく・嚥下機能のレベルに合わせて食べやすさに配慮した食事の総称です。
引用:日本介護食品協議会
ユニバーサルデザインフード(UDF)は、上記の図のように噛む力と飲み込む力を4つの区分に分類し、主食・主菜・副菜の硬さなどを指標にしています。4つの区分は次のとおりです。
- 区分1:容易にかめる
- 区分2:歯ぐきでつぶせる
- 区分3:舌でつぶせる
- 区分4:かまなくてよい
4つの区分の概要や向いている人の特徴がわかれば、咀しゃく・嚥下機能のレベルに合わせた介護食を提供できます。それぞれの区分を詳しく確認していきましょう。
容易にかめる
「容易にかめる」区分は、硬い食材や大きいものだと食べづらさを感じるものの、飲み込む力に問題はなく、スムーズに飲み込める状態が目安です。ごはんは普通の硬さからやわらかめで、メニューが卵料理なら厚焼き卵、肉じゃがはやわらかく煮たものが提供されます。
歯ぐきでつぶせる
「歯ぐきでつぶせる」区分は、硬く大きな食材に対して食べづらさを感じる咀しゃく機能と、食材によって飲み込みづらさを感じる嚥下機能の低下が目安になっています。主食はやわらかいごはんやお粥で、厚焼き玉子の代わりにだし巻き卵、肉じゃがは食材を小さめに刻んでやわらかく煮たものが提供されます。
舌でつぶせる
「舌でつぶせる」区分は食材が小さく刻まれていてやわらかく、調理されたものなら食べられる状態です。サラサラとした水分は飲みづらさを感じるため、とろみをつける必要があるでしょう。ごはんと厚焼き卵の代わりにお粥とスクランブルエッグで、肉じゃがは小さく刻んだ具材をやわらかく煮たものが提供されます。
かまなくてよい
「かまなくてよい」区分は、小さく刻まれていても食べづらさがあり、水分はとろみがないと飲み込みづらさを感じる状態です。ごはんの代わりにペースト状のお粥で、厚焼き卵の代わりはやわらかく調理した具なしの茶碗蒸し、肉じゃがはペースト状にしたものが提供されます。
特別用途食品 えん下困難者用食品
特別用途食品 えん下困難者用食品は、2009年に厚生労働省によって制定された評価基準で、管理は消費者庁が行っています。2018年には、とろみ調整食品が追加されました。とろみ調整食品とは、水や汁物などのサラサラした状態の水分を飲み込みやすいとろみをつける食品のことです。とろみ調整食品を水に加えて混ぜると、とろみ状に変化します。
特別用途食品 えん下困難者用食品の介護食の区分は、食材の硬さやべたつきの度合い(付着性)、まとまりやすさ(凝集性)の3つの物性基準をもとにⅠ〜Ⅲの3段階に分類されています。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類は、2013年に日本摂食嚥下リハビリテーション学会によって制定されました。最新版の日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021には、嚥下調整食やとろみに関する段階・分類に分けられています。
食事は大きく分けて嚥下訓練食品と嚥下調整食の2つがあり、区分は0~4の5段階です。なめらかさやかたさ等、物性の基準によって区分されています。とろみは、薄いとろみ・中間のとろみ・濃いとろみの3段階に分類されています。
スマイルケア食
スマイルケア食は、2016年に農林水産省によって制定された介護食の評価基準です。高齢者だけでなく、咀しゃく・嚥下機能が弱い方や栄養補給が必要な方の介護食品の選択肢を広げる目的で整備されました。スマイルケア食の対象になる方は次のとおりです。
- 咀しゃく・嚥下機能に問題はないが、栄養補給が必要な方
- 咀しゃく能力に問題がある方
- 嚥下機能が弱い方
スマイルケア食は、青マーク・黄マーク・赤マークの3つの区分が設けられています。それぞれのマークの特徴を解説します。
青マーク
青マークは、咀しゃく・嚥下機能に問題がないものの、食事量の低下によって健康維持に必要な栄養を十分にとれない方を対象にしたスマイルケア食です。1日に必要な栄養の不足を補う栄養補助食品が該当します。例えば、主食・主菜・副菜や、おやつ・デザートなどの食事の補助になる食品が挙げられます。
黄マーク
黄マークは噛む力が弱く、咀しゃく能力に問題がある方を対象にしたスマイルケア食です。咀しゃく能力の状態によって固形物からペースト状の4段階に分けられています。例えば、容易に噛める方は焼き豆腐、舌でつぶせない方はペースト状にしたものというように、咀しゃく能力に合わせた介護食を提供できます。
赤マーク
赤マークは飲み込む力が弱く、嚥下機能に問題がある方を対象にしたスマイルケア食です。咀しゃく能力に合わせて3段階が設けられています。咀しゃくできる方にはペースト状、口の中ですりつぶせる方はムース状、咀しゃく能力が低い方にはゼリー状で噛まずにそのまま飲み込める食事を提供できます。
介護食の種類
介護食の種類は幅広く、食べる人の咀しゃく・嚥下機能がどの程度低下しているのかによっても求められる食形態は異なります。ここでは、介護食の種類や概要を食形態別に紹介します。
きざみ食
きざみ食とは、成人向けの食事を食べやすい大きさに加工した食形態です。小さくカットされているだけのため、食材の大きさ以外は通常の食事と同じです。きざみ食といっても一口大から粗みじん切りまでとサイズは食べる人の咀しゃく機能によって異なります。きざみ食は、通常の食事がそのまま出されると食材が大きく噛みづらいと感じる方におすすめです。
ただし、唾液の分泌量が減っている方は口の中で食べ物がまとまりづらく、むせやすくなるため、気管に食べ物が入る誤嚥(ごえん)の恐れがあります。誤嚥を防ぐためには、とろみをつけて食べ物がまとまりやすくなる工夫をしましょう。
やわらか食
やわらか食とは、歯ぐきや舌でつぶせる程度にやわらかく調理された食形態です。食材をやわらかく調理することから、軟菜食とも呼ばれています。通常の食事と見た目が変わらないため、咀しゃく機能が低下した方でも料理を目で見て楽しむことができるでしょう。
蒸す・煮るなどの調理方法や酵素を利用し工夫して食材の食感をやわらかくしているので、素材本来の味を堪能できます。やわらか食は噛む力が弱く、硬い食材やきざみ食では食べづらい方、やわらかい食事を求めている方におすすめです。
ただし、やわらか食は形が崩れやすいので既製品を使用する場合は盛り付けてしてから加熱調理を行う必要があります。
ムース食
ムース食とは、通常の食事を加工してムース状にした食形態です。調理された主食・主菜・副菜をミキサーにかけてゼラチンやゲル化剤を使用してムース状に固めているため、咀しゃく能力が低下した方でもスムーズに飲み込めます。
魚料理は魚型を使用してムースを固めることができ、食べる人が何の料理なのかがわかるように工夫できます。主菜と添え物に分けてムースを作るので、料理ごとの色合いを目で楽しむこともできるでしょう。ムース食は、噛む力が弱まっている方に向いている食形態です。
ミキサー食
通常の食事を一品ごとにミキサーにかけて液状にした食形態をミキサー食といいます。ミキサー食は料理の形状が残らず、目で見て楽しむことができないため食欲を失う方が少なくありません。ミキサー食は、咀しゃく・嚥下機能が低下している方におすすめです。
ただし、料理によって水分が多いとむせやすく誤嚥の心配があるため、とろみ調整剤を使用して適度なとろみをつける必要があります。また、ミキサー食は水分量が多く低栄養になるリスクもあるので、健康維持に必要な栄養をとれるものを選びましょう。
流動食
流動食とは、健康維持に必要な栄養を効率的にとれる液状の食形態を指します。ミキサー食との違いは、消化器官への負担を減らせることです。流動食は、咀しゃく・嚥下機能が低下して口から食べ物をとれない方や寝たきりの方、消化器官の機能が低下している方におすすめです。
流動食は食事をとっている感覚を得られないため、食欲減退につながります。また、流動食を手作りする場合は栄養が不足する可能性があるので、栄養バランスの取れた既成品を選ぶようにしましょう。
介護食を利用するなら管理栄養士監修の献立がおすすめ
介護食の区分は、制定機関によって異なる評価基準が設定されています。介護施設の利用者に安心して食事を楽しんでもらうためには、一人ひとりの咀しゃく・嚥下機能の状態に合わせた介護食を提供する必要があるでしょう。
グローバルキッチンが運営している「まごの手キッチン」では、調理済みの「高齢者食」をはじめ、きざみ食に代わる歯茎と舌でつぶせる「やわらか食」や、ミキサー食に代わる舌でつぶせる「ムース食」をご用意しています。
献立は和洋中800種類以上と豊富で、定期利用しても飽きのこないメニューを取りそろえています。人手不足になりがちな朝食のみなど、スポット利用することも可能です。
栄養の専門家である管理栄養士が献立を作成しているため、栄養管理のサポートもできます。高齢者施設で提供するお食事や介護食を検討されている方向けに、無料試食サンプルや詳細をまとめた資料を配布しているので、ぜひご利用ください。
無料試食サンプル申込:https://www.global-kitchen.jp/request/