介護施設で食事提供するには?3つの方法や必要な手続きを紹介
介護施設や老人福祉施設で食事提供を行う方法は主に3つあり、それぞれメリットやデメリットが異なります。施設の業態や人員に合わせて適切な方法を選ぶことで、利用者への食事提供をスムーズに行えます。
どの方法を選ぶのかによって必要になる手続きも変わるため、事前に理解しておくことが大切です。本記事では、介護施設で食事提供を行う方法と必要な手続きを解説します。食事提供をサポートするサービスも紹介しているため、ぜひ参考にして下さい。
高齢者向けの介護施設で食事提供を行う3つの方法
介護施設で利用者に食事提供を行う方法は大きく分けて、「自前調理」「委託調理」「配食 サービス」の3つがあります。本章では、それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
施設内で調理を行う「自前調理」
自前調理は介護施設内に設置した厨房で調理を行い、でき上がった食事を利用者へ提供する方法です。給食業務に携わる栄養士や調理師、調理員は施設で直接雇用します。
自前調理を行うメリットは、介護職員と給食業務職員が利用者の情報を共有しやすく、体調や状態に合わせて食事内容を工夫できることです。介護職員が利用者から食事の嗜好や要望をヒアリングし、給食業務職員に伝えることで迅速に、かつ細かく食事内容へ反映できます。
ただし、介護職員とは別に給食業務職員を確保する必要があり、人材確保の手間や人件費、食材費、水道光熱費などの費用が別途必要です。既存の職員が給食業務を行う場合は、介護サービスと給食業務を兼務することになり、職員に大きな負担がかかります。
委託した業者が調理を行う「委託調理」
委託調理は、給食業務の受託会社に施設内の給食業務を委託する方法です。厨房や調理設備は施設側で用意し、給食業務に必要な人員は受託会社側が確保します。
委託調理のメリットは施設側で給食業務に必要な人員を雇用する必要がないため、人材確保の負担や人件費を削減できることです。また、調理作業はもちろん、在庫管理や衛生管理なども受託業者に任せられ、コスト削減が期待できます。給食業務や介護食のノウハウが豊富な業者に委託することで安定した品質の食事を提供できるでしょう。
ただし、調理は業者が行うことから、利用者や施設の要望に対応できないケースも出てくるでしょう。食事の品質は業者ごとに異なるため、業者選びの際は食形態の対応などを含め、どこまで対応可能かも確認が必要です。
調理済みのお弁当や冷凍食材を使う「配食 サービス」
配食サービスには、お弁当の配送や調理済み冷凍食材を配送するサービスなどがあります。メリットは施設側が厨房や調理員を必ずしも確保する必要がないため、施設整備費や人件費、水道光熱費などのコストが不要、あるいは抑えることができることです。また、委託調理で必要な管理費も不要になります。
調理済み冷凍食材の配送サービスは、湯煎や電子レンジで温めたり、冷蔵庫で解凍したりするだけの簡単な調理だけで食事提供が行えるため、職員の業務負担を減らせます。また、生ものなどの下処理が不要であるため衛生管理面において食中毒のリスクも抑えられます。
さらに、冷凍食材は長期保存できるため、食数や食形態の変更が必要な時にも柔軟な対応が可能です。食と栄養の専門家である管理栄養士が献立作成しているサービスを選べば、施設内で献立を決める手間もかかりません。
ただし、サービスによってはメニューの種類が限られており、毎日の献立がマンネリ化する恐れがあります。また、自前調理と比べて調理方法やメニューの変更が難しく、柔軟な対応がしづらくなる場合もあります。
介護施設で食事提供するために必要な条件・手続き
介護施設での食事提供には、営業届け出や営業許可申請、食品衛生責任者の設置が必要な場合があります。また、施設の種類によっては食堂の広さに一定以上の面積を確保することが義務付けられています。
保健所に営業届を提出する
介護施設で食事提供する際に営業届の提出が求められるのは、自前調理や委託調理の場合です。また、解凍や盛り付けなどの作業を含む調理済み冷凍食材を提供するケースも含まれます。
一方で、配食サービスなどを利用し、お弁当をそのまま提供する場合は、営業届の提出や食品衛生責任者の配置は不要です。ただし、お弁当を利用者に販売する場合は営業届の提出が必要です。
なお、調理をする施設でも、営業届の申請が不要なケースは、施設で提供する食数が1回当たり20食未満の場合に限られます。例えば、夕食で20人以上の利用者に食事提供した場合は営業届の申請が必要です。
食品衛生責任者を配置する
食品衛生法が改正され、2021年6月1日から食品を提供する全ての施設に1名以上の食品衛生責任者の配置が義務付けられました。介護施設で食事を提供する場合も例外はなく、食品衛生責任者の配置が必要です。
食品衛生責任者は食事提供における衛生管理の責任者です。厨房内を清潔に保つ、食品を適切な温度で管理するなど、食事提供に関わる衛生管理や衛生上の課題の解決を任されています。食品衛生責任者は営業者の指示に従い衛生管理に当たることとなっており、営業者は、食品衛生責任者の意見を尊重しなければなりません。
食品衛生責任者として登録するには、栄養士や調理師、製菓衛生師などの資格を保有していること、または都道府県知事が指定する講習会を受講する必要があります。
栄養士・管理栄養士の配置も必要?
栄養士や管理栄養士は、献立作成や栄養計算などを行う食と栄養の専門家です。栄養士や管理栄養士の配置が義務付けられている主な施設は以下の通りです。
- 病院
- 介護老人保健施設
- 特別養護老人ホーム
- 養護老人ホーム
- 軽費老人ホーム
上記はいずれも都道府県知事から指定を受けた施設を指します。上記に該当する施設でも食数や周辺施設との連携などによっては、栄養士や管理栄養士の配置が不要なケースもあります。食事提供を行う場合は、栄養士や管理栄養士の配置義務があるか、事前に確認することが大切です。
なお、配置が不要でも、栄養士や管理栄養士の管理下で食事提供を行えば、利用者や家族に安心してもらえるでしょう。
調理スタッフに資格は必要?
介護施設で食事提供を行うスタッフに、調理師の資格は必須ではありません。資格がない人でも、調理補助や調理員として作業に携われます。無資格でもできる仕事内容は調理や盛り付け、配膳、片付け・清掃、食材の発注・在庫管理などです。
ただし、高齢者が安心して食べられる食事を提供するには、介護食の知識や調理技術が必要です。高齢者は加齢によって噛む力や飲み込む力が弱くなる傾向があり、利用者の状態に合わせた食事のやわらかさや食形態に配慮した食事を提供する必要があります。
規程の面積を満たした食堂を確保する(通所介護・介護老人保健施設など)
介護施設の中には、食堂の面積に規定が設けられている場合があります。施設の種類と規定されている食堂の床面積は以下の通りです。
- 通所介護(デイサービス):通所定員×3㎡以上
- 介護老人保健施設:入所定員×2㎡以上
- 特別養護老人ホーム:入所定員×1㎡以上
- 介護医療院:入所定員×1㎡以上
食堂の床面積はいずれも内法による測定が原則です。内法は壁の内側を指します。例えば、利用者30人に食事提供する場合は30人×2㎡=60㎡と計算でき、60㎡以上の食堂を設ける必要があります。
介護施設の利用者のためにできる食事提供の工夫(適切な食事形態・安心できる食事環境など)
介護施設での食事提供は、高齢者の飲み込む力や食欲の低下に配慮する必要があります。また、安心できる食事環境やイベント食の提供など、食事を楽しむことにつながる工夫も大切です。
以下に挙げる工夫を参考にしつつ、利用者に安心して食べてもらえる食事の提供を検討してみましょう。
工夫内容 |
例 |
噛む力・飲み込む力を考慮した食事を提供する |
・食材をやわらかく調理する ・食材をペースト状に加工して飲み込みやすくする |
食欲が湧くメニューにする |
・アクセントになる色味の食材を飾る ・香りや酸味を利用する |
安心できる食事環境をつくる |
・利用者の食事を介助する ・利用者が希望する場所で食事ができるようにする |
イベント食や行事食を提供する |
・季節ごとの旬の食材を使用する ・利用者の誕生日には特別メニューにする |
介護施設での食事提供をサポートする「まごの手キッチン」
「まごの手キッチン」は、高齢者施設・介護施設向けに調理済みの冷凍食材を配送するサービスです。取り扱っている商品は、和食・洋食・中華を合わせて800種類以上です。季節を感じられる行事食も提供できるため、利用者に食事を楽しんでもらえるでしょう。噛む力が低下している人でも歯茎でつぶせる「やわらか食(ソフト食)」や、飲み込む力が低下した人向けの「ムース食」などもあります。
また、管理栄養士が献立を作成しており、栄養バランスの取れた食事を提供できます。調理済み冷凍食材は冷蔵解凍や湯煎による簡単な調理ですぐに食べられるため、人件費や水道光熱費はもちろん、冷凍で長期保存が可能なため食材のロスが削減でき、食材費の削減も見込めます。余った時間やコストは介護・介助サービスの質の向上に充てられるため、利用者の満足度向上につながります。
介護施設の食事提供は施設に合った方法を選択しよう
介護施設で食事提供する際は、施設の種類や提供方法などによって営業届の提出や食品衛生責任者、栄養士・管理栄養士の配置が必要です。
自前調理や委託調理では、人件費や施設設備費、光熱費などのコストが発生する一方で、配食サービスはこれらのコスト削減が可能です。また、管理栄養士が献立作成する配食サービスなら、栄養バランスを考えたバリエーション豊富なメニューを提供できます。
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